帝国データバンクがこのほど公表した今年1月の景気動向調査(全国の企業対象)で、同月の旅館・ホテルの景気DI(0~100、50が判断の分かれ目)は前月比0.6ポイント減の38.5と、2カ月連続で悪化した。中国発の新型肺炎が春節時期に拡大し、「旅館・ホテルや輸出・生産関連などに影響が表れた」と同社。全業種計は前月比0.6ポイント減の41.9と、4カ月連続で悪化した。
DI悪化の背景にこのほか、記録的な暖冬による季節需要や農業の落ち込み、海外経済の減速に伴う製造業の低迷、関連業種への波及などを挙げている。
今後について同社は「中国からの訪日客の一時的減少が長引くことなども懸念される」とし、米中貿易摩擦、英国のEU脱退後の展開も含めて「海外動向が最大のリスク要因となり、緩やかな後退が見込まれる」と見通しを述べている。
DIを10の業界別に見ると、改善と悪化が5業界ずつだった。このうち旅館・ホテルを含めたサービスが同0.7ポイント増の49.5。15業種中、悪化は旅館・ホテル、放送、メンテナンス・警備・検査、教育サービスの4業種で、ほかの娯楽サービス(同1.9ポイント増の39.4)、飲食店(同0.3ポイント増の41.0)などは改善した。
このほか改善は小売、金融、不動産、その他の各業界。悪化は農・林・水産、建設、製造、卸売、運輸・倉庫の各業界。
10の地域別では、南関東、九州の2地域が改善。ほかの8地域が悪化した。東北が同2.1ポイント減の38.8、北陸が同1.9ポイント減の37.6など、「北日本を中心に、暖冬傾向が悪材料に」と同社。
景況感に関する企業の主な声は次の通り。
「得意先にスキー場関係が多いが、暖冬で雪が降らなかったこともあり年末年始の販売が大きなマイナスとなった」(現在、悪い、酒類卸売)。
「暖冬の影響でクローズ日数が少なくなっている」(現在、良い、ゴルフ場)。
「宿泊施設の新規開業ラッシュによる宿泊者の分散および韓国からの訪日旅行客の激減により、ホテル業界の稼働率が落ちてきている」(現在、悪い、リネンサプライ)。
「今後もホテル建設が続くほか、大阪万博やIR(統合型リゾート)がある」(先行き、良い、板金工事)。
「新型肺炎の流行で国内観光業界やホテル施設の新築、改修計画にどの程度影響があるか見えない」(先行き、どちらでもない、家具・建具卸売)。
「宿泊施設などのリニューアルや新築のほか、大阪万博やリニア建設なども好材料になる」(先行き、良い、建設機械器具賃貸)。
「中国で発生した新型肺炎のまん延で経済危機が起きる可能性を心配」(先行き、どちらでもない、技術提供)。
「消費税率引き上げによる消費の冷え込みが続く」(先行き、悪い、日本料理店)。